K-POPで振り返る2020年の国際連帯

K-POPで振り返る2020年の国際連帯

[INTERNATIONAL]

 

ナ・ヒョンピル(国際民主連帯) 2021.01.11 09:07

 

 

[出処:ロイター画面キャプチャー]

 

 

BTSの黄色い傘

 

BTSに2020年は忘れられない年だった。 発表する歌ごとにビルボードのチャートをさらい、 東洋人に閉鎖的だったグラミー賞候補にまで指名された。 大衆音楽を越えて、一つの全地球的な現象になったといっても過言ではなかった。 BTSの影響力は世界各国の政治にも影響した。 代表的な事例が2020年に米国を揺さぶった米国大統領選挙と 「黒人生命は貴重だ(Black Lives Matter、BLM)」デモだ。 BTSのファンダムであるアーミーをはじめとする米国のK-Popファンは、 人種差別反対デモに積極的に参加した。 彼らは白人優越主義者たちがBLMに対抗して作ったハッシュタグ 「白人の生命は貴重だ(#WhiteLivesMatter)」を無力化するために、 好きな歌手のファンカム(ファンが自分で撮影した歌手の映像)に#WhiteLivesMatter のハッシュタグを付けて書き込んだ。 つまり、オンラインで白人優越主義者のハッシュタグを検索すると K-Popの歌手のファンカムが検索されて、 白人優越主義者のオンライン扇動が無力化されたのだ。 この方式は、米国のダラス警察庁が人種差別デモの暴力性を強調するために 不法暴力行為を情報を提供するようにと作った専用アプリに K-Popファンがファンカムを付けまくって、また話題になった。

アーミーをはじめとするK-Popファンは、 トランプの選挙遊説にも支障をもたらす威力を発揮した。 トランプの6月のオクラホマ遊説を控えてK-Popファンと TikTok(動画中心のSNS)ユーザーは、 遊説チケットを予約して取り消す方式でトランプキャンプをもてあそんだ。 トランプ陣営は最初に多くの選挙遊説チケットが売れるのを見て、 興行の成功を大言壮語したが、 実際に参加した人員はいくらにもならず混乱に陥った。 ニューヨークタイムズは、こうしたK-Popファンの積極的なオンライン行動を記事にした。 こうしてK-Popファンの活動が米国の政治と社会運動で注目され、 K-Popを代表するBTSの政治的影響力も注目されるようになった。 BTSが2020年10月、韓米の友好関係に寄与した人物にあたえられるベントリー賞を受賞して 「朝鮮戦争70周年を迎え、韓国と米国が共に体験した苦難の歴史と犠牲を永遠に記憶する」という受賞所感を述べると 中国のネチズンは神経質な反応を吐き出した。 しかしこうした中国のネチズンの過激な反応は、むしろ逆風を受けた。 議論が続き、中国政府はBTSに対する中国ネチズンの攻撃は、 中国政府の公式な立場ではないという立場まで出した。 こうした状況で、BTSメンバーのジョングク氏が黒い服に黄色い傘をさした写真を出し、 香港のネチズンをはじめとする多くの人は、 BTSが香港デモを支持するメッセージを出したものと解釈した。 最近拘束された香港の活動家、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)は、 自分も「アーミー」だとしてBTSの朝鮮戦争関連の発言を支持すると明らかにした。

[出処:BTSツイッター・アカウント画面キャプチャー]

実際に、BTSが自分の発言に対する中国ネチズンの攻撃を意識して、 また香港デモを支持するメッセージを意図したのかどうかは誰も知らない。 しかしBTSの行動と言葉一つ一つが政治的に解釈され、 米中の対立と香港デモのような懸案に強大な影響力を行使する存在になったという事実に異議を提起することは難しい。 BTSのファンダムであるアーミーの内部でも、 BTSの動きの政治的な解釈を警戒する声も強い。 しかし、BTSの世界的な政治的影響力はこれまで韓国社会が経験したことがなく、 国際連帯活動家もこの影響力をどう評価すべきか混乱している。 だが少なくとも、BTSはファンが指向し、参加する主張と価値が何かを認識し、 それに応じる姿を見せるたのは明らかだ。 それが事業的な面で計画された演出だとしてもである。

国家、宗教、ブラックピンク

BTSとともに世界のポップス界に確固たる位置を占めている韓国のアイドルグループは他にもある。 まさにブラックピンクだ。 ブラックピンクの世界的な人気を実感するエピソードが最近韓国にもあった。 9月からタイの10代と20代が主軸になって始まった民主化デモで、 タイの少女時代ファンダムをはじめとするK-Popファンの活動は韓国でも話題になった。 タイのデモ隊が少女時代の「また巡り逢えた世界」を歌う姿は 前の寄稿でも紹介した。

そして韓国で暮らすタイの青年たちも、 本国の民主化デモに呼応するために10月25日、東大門デザインプラザの前でデモを行った。 コロナによって99人に人員が制限された状況でも、 韓国で暮らすタイの青年たちは三本の指を高く上げて 曺国(チョ・グク)の民主主義と王室改革を要求した。 そしてこの日のイベントに、あるタイの青年が 「国家、宗教、ブラックピンク」というプラカードを持って参加した。

タイで国家、宗教(仏教)、王室はタイを支える3つの大きな柱と見なす。 すなわち、国家と仏教、王室はタイで聖域と見なされていた。 そのうち王室は、国家と仏教の守護者の役割を自任して、 立憲君主制以上の政治的影響力を維持する一方、 軍部クーデターと独裁を事実上黙認してきた。 しかし最近、タイの青年たちが王室はまさに民主主義と不公平な社会体制の障害だと指定して、王室改革を要求し始めた。 これはタイの社会に大きな衝撃を抱かせた。

こうした点を考慮すると、韓国でのデモにタイ青年が持ち出したプラカードがいかに転覆的なメッセージだったのかを察することができる。 タイを支えてきた3本の大きな柱のうち、 王室の場に「ブラックピンク」と書いたのは、 ブラックピンクに対するファンダム以上の意味を持つ。

K-POPよりファンダム

これまで韓国のいわゆる巨大芸能プロと呼ばれるSMとYG、JYPは、 政治的問題は言うまでもなく、社会的問題にも沈黙を守ってきた。 特にJYPは2016年の台湾総統選挙を控えて起きた TWICEメンバー、ツウィ氏の「台湾国旗事件」で大きな打撃を受けた経験があるため、 巨大芸能プロの立場としてはさらに用心深くなったのかもしれない。 しかしBTSの事例で見られるように、K-Popを消費する世界の青年世代の 政治的あるいは社会的イシューに対し、 K-Popグループがこれ以上沈黙するのは難しい状況になっている。

ブラックピンクは12月9日、彼らの公式YouTubeに気候危機に対応しようというメッセージを上げた。 ブラックピンクが所属するYG所属のアーティストと経営陣が、 これまでさまざまな社会的な物議をかもしたことを考慮すれば、 ブラックピンクのこのような動きは異例だ。 気候危機問題が政治的議論よりは相対的に自由だと判断したのかも知れない。 しかしブラックピンク程度の影響力を持ったグループが、 もうこれ以上社会的なイシューに対して沈黙することは難しいと判断したものと見られる。

K-POPが抵抗的なものでなく、K-POPを楽しむ青年の行動が、 時には抵抗として、時には連帯として現れていると見るのが正確だ。 注目すべき点は、なぜこの時代の地球の青年たちは労働組合や政党、社会団体ではなく、 K-Popファンダムの形態で社会の前面に出ているのかだ。 「なぜK-POPなのか」よりも「なぜファンダムなのか?」へと、 この驚くべき現象に対する分析の焦点を移動させなければと考える。

原文(チャムセサン)

カテゴリー: その他 パーマリンク