新自由主義を食い破る現場からの報告
共同作業所に労働組合をつくろう
作業所にしおぎ館 高橋道子

 北海道国際婦人デー集会報告「作業所同士の団結を」に感銘を受けました。全く同じ課題と希望を抱えているからです。
 私は、東京・杉並区の就労継続支援B型事業所、作業所にしおぎ館で職員として働いています。にしおぎ館の出先事業所である横浜クーニーズショップでは2016年、通所メンバーから受給者証を取り上げるという攻撃がかけられました。しかし、合同労組かながわの作業所分会として職員とメンバーが団結して行政に対する申し入れ行動に立ち上がり、受給者証剝奪(はくだつ)を粉砕しました。その際、「受給者証の更新を認めないのは障害者メンバーから労働の権利を奪うことであり、作業所に対する不当労働行為だ」「私たちも労働者だ」と訴えました。

■連絡会の団結が大きな力に

 杉並には精神障害者の地域生活を支援する事業所を越えた連絡会があり、毎年、統一の要望書を作成して障害者施策課・支援課と交渉を続けています。
 昨年は、通常の要望内容に加え「終息が見込めない新型コロナウイルス感染症の感染危機の中で障害者の地域生活支援を継続する為の要望書」を提出しました。この文章は「地域福祉、障害者福祉の実践は社会保障そのものです。各事業所と杉並区行政が力を合わせて、利用者の命と生活を守りきり、必要な福祉事業を続けていきましょう」と結んでいます。
 焦点はこの間、厚労省からも通達されている「在宅支援」をめぐるやりとりです。具体的には「通所しなくても、必要な支援を行えば通常の通所とみなし、給付の対象とする」ということです。
 緊急事態宣言下、新型コロナ感染症拡大の中で、障害者メンバーが通所すること、作業所を開け続けることは大変です。やむを得ず通所できないメンバーに対する支援は切実です。私たちは電話対応、お弁当の配達、訪問など工夫して地域生活を支援しました。その一方、毎日皆で話し合いながら作業所を開け続けました。
 在宅支援をめぐっては全国まちまちのようで、埼玉の生活介護事業所で働く友人は、「重度知的障害者は作業所に来なければ生活できない。親の同意が必要なので(在宅支援は)無理」と話していました。心身に障害を抱える利用者にとって、共同作業所は生きるために必須の場所です。
 在宅支援の様々な条件の中に「最低月に一度の通所か訪問による面談」があります。にしおぎ館では遠方に避難しているメンバーがいますが、昨年末の新型コロナの感染拡大で訪問できない事態になりました。これに対して区は、「それでは在宅支援対象から外れても良いのですね」と言ってきたのです。
 ここからが闘いの始まりです。私たちは区側の調査訪問に対し、まず立場をはっきりさせてもらいました。「あなたたちは、どういう立場ですか? 何とか事業所(障害者メンバーと働くスタッフ)を存続・維持し、感染しない、させないために力になる。さらに対象者が精神病を抱える利用者ということから、病状を悪化させない。そのために事業所と共に知恵を出し合い、柔軟に協力していくという立場ですか? それとも、コロナ以前の形式的で一面的な通所基準・評価を固持し、苦闘する事業所を追いつめ、存続を危うくするという立場ですか?」
 昨年8月の対区交渉の際、施策課長は「在宅支援は個別的に、柔軟に、回数ではなく寄り添って」など、ずいぶん理解ある態度でした。しかし、その内容は課の職員とは共有されず、現場に「原則的対応」を任せていたのです。
 私たちは当時の議事録から課長の答弁を紹介し、調査に来た職員を圧倒しました。杉並の作業所連絡会の団結と日々の実践に裏打ちされた私たちは引き下がりません。要求した通りの回答を引き出すことができました。

■労組通じた階級的団結を

 北海道の仲間の皆さん。「関西生コン支部のように作業所同士が一つになって行政と闘うべき」との意見、その通りです。杉並の連絡会は労働組合ではありませんが、作業所の協同組合的存在だと私は思っています。個別作業所の課題も全体で話し合い要求しています。2006年、障害者自立支援法の施行に反対し、区内15カ所の作業所が一斉に休館して220人で集会を持った地平は現在も維持されているのです。
 その上で、やはり労働組合が必要です。北海道集会の報告での作業所利用者の「福祉の切り捨ての中で職員が心も体もボロボロになっていくところを何度も見てきた。なんとかならないかとずっと思ってきた」という発言に対する答えだからです。障害者当事者と職員という分断的関係を階級的な団結にしていくのは労働組合しかないことを、横浜で開始した作業所分会の中で実感してきました。実際には失敗、困難の連続ですが。
 共同作業所が新自由主義を根底から食い破り、新しい社会を創っていく実践だと確信し、時代に登場していきましょう。職場の仲間と何度でも何度でも討論し、労働組合の旗を掲げましょう。

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