職場にクラスター発生しても休めず 介護従事者の窮状「自己犠牲で成り立っている」

職場にクラスター発生しても休めず 介護従事者の窮状「自己犠牲で成り立っている」

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神戸新聞NEXT

介護現場の現状を語る伊藤竹彦さん=神戸市中央区東川崎町1(撮影・鈴木雅之)

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、身体接触が避けられない労働環境にあっても業務を続ける介護従事者から、窮状を訴える声が神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」などに寄せられている。

 PCR検査は自己負担、自宅待機は有給休暇、職場にクラスター(感染者集団)が発生しても休めない。入院できず自宅や施設にとどまる要介護の感染者も急増する中、公的な支援が進む医療従事者らと比べ「介護は二の次だと見捨てられているようだ」とのため息がもれる。

 神戸市内の介護施設に勤める30代女性は4月、コロナに感染した利用者と接した職員の濃厚接触者と判断され、2週間の自宅待機を命じられた。その際、上司からは有給休暇を取るよう指示されたという。

 「感染リスクが高い仕事なのに、有休を使って休まなければならないなんて納得がいかない」と憤る。

 別の介護施設でも、コロナに感染した入居者に対応した職員のPCR検査は自己負担。2週間の自宅待機も有給休暇となった。関係者は「処遇があまりにひどい。現状は自己犠牲の上で成り立っている」と話す。

 50人以上のクラスターが発生し、死者も出た宝塚市の介護施設では、職員らが感染リスクにおびえながら勤務を続ける。職員の一人は「出勤者が減り、職員の受け持ち人数が増えている。体力が低下し、感染リスクが高まっているように感じる」と話した。      

◇  「コロナと闘う医療従事者を皆様の寄付で応援しましょう!」

 4月、兵庫県のコロナ感染症対策本部から届いたメールに、在宅介護ヘルパーを派遣するNPO法人「こころ」(神戸市東灘区)理事長、伊藤竹彦さん(50)は複雑な思いを抱いた。

 国や県は介護事業所に「感染防止対策を徹底し、サービス提供継続を」と指示する。一方で、国や自治体の支援や民間からの応援は、医療従事者ほど手厚くはないと感じる。

 こころは、通所する介護施設などでクラスターが発生した利用者の対応も担う。

 入浴や排せつの補助など、身体接触は避けられない。家の中ではマスクをしていない利用者もいる。寒い時期は換気のために窓を開けるのが難しいことも。県から感染予防の物品支援はあるが、「防護服を着てケアするのは現実的に無理」という。

 伊藤さん自身、感染が判明した利用者の濃厚接触者となった経験がある。

 伊藤さんは「医療従事者は最前線で命を懸けて闘ってくれているが、私たちも命を懸けて、利用者の生命や生活を支えている自負がある。介護の現場でも闘いが続き、従事者が疲弊していることを知ってほしい」と思いを語った。

(名倉あかり)

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