エクアドルの日本企業、現代の奴隷労働で断罪される(5月7日)

 「人間以下」の条件での労働、飲み水も電気も衛生設備もない。労働契約も社会保険もなく、1日10時間以上の労働。タコ部屋。児童労働。農業機械の危険な扱いからの四肢切断。

 これらは100人以上の農民、その多くはアフリカ系の子孫たちだが、かれらがエクアドルのフルカワ・プランタシオネスC.A.[古川拓殖株式会社]で受けた虐待の一部である。それはエクアドルの主要なアバカ繊維(マニラ麻とも呼ばれる)の生産者である。

 4月19日、憲法裁判所は日本資本のアバカ会社にたいして、その恐るべき条件の下で働き、生活していた123人の元労働者にたいして、かれらが要求していた賠償をおこなうように、歴史的な判決をおこなった。

 判決をおこなった裁判官はカルロス・ベラ・セデニョで、すでに今年の1月、フルカワ・プランテーションにおいて現代の奴隷制の形態が、法的には「農奴制」として知られるものが、農場でおこなわれていたことを認めていた。

 この判決はエクアドルにおいて、企業の奴隷労働を初めて認めたこと、それだけに意味があるのではない。

 国家がこの不法な行為を予防する措置を取らなかった、その責任を認めた先例になったことにもある。

 「被害者の権利を侵害した、責任の主要な部分は、これらすべての行為をおこなったフルカワに帰されるものである」、246ページの判決にはこう指摘されている。

 「しかしそこで描写されているすべての虐待の責任が、労働省にもあることを指摘しなければならない」、と付け加える。

 「もしも労働省がその責任を果たし、労働者が生活している場所まで赴いたならば、フルカワが犯した虐待のすべてを、避けることができていたであろう」、資料は強調している。

 「こうした理由から、損失を受けた被害者の権利の全体が、判決にあるように労働省の責任に帰せられる。なぜならその権限の怠慢によって、これらの行為が助長されたのである」。

賠償

 ベラ・セデニョ裁判長はフルカワにたいし、裁判官全国評議会(CNJ)によって委託された専門家が決定する総額を、原告のそれぞれにたいして支払うことを決定した。

 さらに日本企業、古川拓殖マーケティング株式会社の子会社にたいし、虐待を受けた農民それぞれに、土地5ヘクタール、あるいはそれに相当する金額を支払うように命じた。

 しかし賠償は、経済的なもの以上のものである。

 裁判官はこの会社にたいし、元従業員にたいして公に謝罪をおこなうこと、エクアドルで最大の日刊紙に、これを掲載することを命令した。

 一方エクアドル政府もまた、謝罪をおこなわなければならない。

 判決は労働省、経済・社会省、公共保健省にたいして、それぞれのウェブ・サイトに、侵害を適切に抑止しなかったことについての謝罪を公にすることを命じた。

 アンドレス・イスチ労働相はBBCムンドにたいして、「判決は全体的に遵守される」、と語った。

 BBCムンドは、エクアドルのフルカワ・プランテーションの代表にたいしても、判決について質問をおこなったが、回答を得てはいない。

 会社の弁護団は判事にたいして、判決を控訴すると発表した。

仕事の功績にたいする顕賞

 この判決が明らかになった2日後、労働省はフルカワ社にたいして、その仕事の功績の評価、2005年、エクアドルのアルフレド・パラシオ政府が与えた顕賞を撤回すると発表した。

 「われわれはわれわれ自身の判断で、何年か前に、労働省がフルカワに授与した顕賞を撤回した」、イスチはBBCムンドに認めた。

 しかし自国の労働者を搾取していた企業にたいして、仕事への功績でエクアドル国家が顕賞を授与していたというのは、どう説明ができるのだろうか?

 イスチは2020年にその職に就いたのだが、過去の政府の責任にした。とりわけ当時の労働大臣であったガロ・チリボガに。かれが表彰をおこなった。

 「唯一わたしにできる説明というのは、(明白にわたしは理由を知らないのですが)、かれらが会社の輸出量だけを見て、これについての徹底した調査、検査をおこなったことがなかったということです」、と指摘した。

 「疑いもなく国家は、数十年間にわたり、虐待を見つけ、悲惨な状態に置かれた人々を適切に保護することに失敗した(判決は非常に明確にこの虐待を認めている)」。

 「このような事件を繰り返してはならない」、と付け加えた。

 しかしながら「フルカワ連帯委員会」(CSF)に結集する人権活動家たちは、この顕賞は、国家と農業輸出業者との結託を暴露したもので、この関係は現在も続いていると強調する。

 「国家にとって、魅力的な収入をもたらすであろうと思える企業を、振興することに関心を持っている」、弁護士のパトリシア・カリオンは認めた。彼女は「普遍的な人権委員会」(CEDH)のメンバーであり、フルカワの元労働者たちを支援する一人である。

 カリオンによると、これが当局をしてー「行動によるか怠惰によるかであれ」ーフルカワのような大規模農業輸出業者を保護するところにもっていく。

 「あるいは当局は、この産業で現在起きていることにたいして何も考えていないか、そこで労働者が置かれている状態を隠している」、と指摘する。

 現在においても、政府とこのセクター、「経済人と政治家の利益」は引き続き一致していると、この弁護士は強調する。

 たとえて例を挙げると、現在のフルカワ会社の重役は、現在のレニン・モレノ政府の農業副大臣であった。

1963年から

 フルカワ・プランテーションは、ほとんど60年前からエクアドルで活動しており、この国はアバカ繊維で世界で第2位の生産量となっている。この材料は非常に耐久性があり、いくつかの産業、自動車業においても使用されており、しばしばグラスファイバーに置き換えられたりする。

 エクアドルは毎年アバカ繊維を約7,000トン、米国、欧州、アジアに輸出しており、1700万ドル以上の利益がある。

 このエクアドルの主要なアバカ生産者は、23の農園を所有しており、2,300ヘクタールの土地で、エクアドル北西部、サントドミンゴ・デ・ロス・ツァチラス、ロスリオス、エスメラルダス、の各県にまたがっている。

 会社を告訴した123人の元労働者は、家族とともに、いくつもの農園に建てられ現在は大方解体されたみすぼらしい家屋に住んでいた。

 ウォーカー・ビスカラは写真家で、暴力に反対する活動家だが、2019年に、これらのいくつかについて、BBCムンドに語っていた。それらは小さな建物で、平均して約10から15平方メートル、そこに3人から4人の家族が住んでいた。

 「そこには17戸にわずか1カ所のトイレがあり、住居からは約20メートル離れていた」、と語った。

 ビスカラはまた、かれらの多くは、手の一部が欠けていたことを語っている。

 「指の欠損などは、繊維をほぐすために機械に通すとき、多くの場合その力が制御を外れ、手指を打って、しばしば指が切り落とされたり破損する」、と説明される。

貧困と疾病

 弁護士の要求によって保健省がおこなった医療診断では、手の障害以外に、すべての原告たちが何らかの慢性疾患を患っている。

 何人かは皮膚に感染症がある。しかし多くのものが患っている病気は呼吸器で、アバカを生産する過程でできた埃を吸った結果である。しかし何よりも、夜間も働かせるために使用した、灯油ランプの残りかすによるものが大きい。

 また子どもたちが、これらの病気を患っている。カリオンによると、多くの子どもが、8歳か9歳から、働くことを強いられていた。

 2019年に社会経済包摂省がおこなった、400人のアバカ農民の生活条件記録では、その83%が極貧の条件で生活しており、貧困ではないものはわずかに2%に過ぎなかった。

 弁護士の指摘では、この貧困が、労働者の奴隷状態を維持することになる。

 「生活条件が、仕事を探すために他の場所へ出ていくことを許さない」、そのほかの障害のなかでも。たとえば農園は主要道路から、非常に離れたところにあり、移動する手段に欠けていることなど。

 2019年に調査された、当時のオンブズマン、ヒナ・ベネビデスの告発ー彼女はこの職務に就いた最初の女性であったーのおかげで、またボランティアの弁護士たちのグループのおかげで、彼女たちは搾取される労働者を守るために集まった、ーそのなかにはカリオンがいて、また主要な弁護士アレハンドラ・サンブラノがいるー彼女らのおかげでこの現代の奴隷労働は、最終的に明るみに出され、判決がおこなわれることになった。

現在はどうなっているのか

 しかし歴史的なフルカワ・プランテーションC.A.エクアドルにたいする判決にもかかわらず、はっきりしていることは、会社はいままでと変わることなく、活動を続けることが出来ているということである。

 42,880ドルの罰金、労働省が2019年初頭に命令した90日間の閉鎖、オンブズマンの虐待に関する報告書の提出のあと、このアバカ会社は閉鎖されることもなく、これ以外の処分を受けることもない。

 2019年2月に労働省が発出した閉鎖発表の声明には、捜査によって明らかとなった詳細が書かれている。たとえば「非人間的な労働条件、児童労働、不衛生、労働のリスク、被服や労働の用具を与えていないこと、労働災害、高齢者の人々」など。

 フルカワ・プランテーションは198人の直接雇用の労働者がいること、かれらは平等な賃金を得ており、法が定める以上のすべての法的利益を得ていること、それには社会保険が含まれること、ユニフォーム、手袋そのほか労働に必要な物資が与えられていると主張する。

 しかし国家政策管理局(SNGP、現在の政府省)が2019年3月におこなった人口調査では、このフルカワ農園では、1,244人が居住し働いていたことが明らかになっている。

 人権問題国際連盟(FIDH)が協力のもとにおこなったミッションで、2019年7月に発行した詳細な報告書のなかで、「エクアドルにおける現代の奴隷労働が存在している」ことが認められている。

 人々の多くはアフリカ系の子孫たちで、正式な教育を受けておらず、非識字状態にある。

恐れ

 カリオンによると、雇用主を告発する勇気を持った123人は、仕事を失うことを理解しているという。

 「多くの人は要求するという贅沢をおこなうことができない」、そのように主張する。奴隷労働は「エクアドルの農業において、日常的なことなのだ」。これはエクアドルにとって利益となる、他の産業でも起きる。たとえばバナナやエビなどで。

 「再び人間になったように感じます」、代表の一人が裁判に勝ったあと、彼女に語った。

 しかしながら被害者たちはいかなる賠償も、判決が確定するまでのあいだ、受け取ることはできないと弁護士は言う。控訴審が終わらないあいだは。すでに労働省は、控訴状を提出した。

 この件でイスチ労働相に質問をおこなうと、「規則があって、公共機関はそれに反する決定にたいして、異議申し立てをおこなうことが義務づけられている」、と説明する。

 しかしながら労相は保証する:「第2審の結果を待っていることはない。即時に義務を果たしたい」。

 かれが言ったなかには、フルカワ会社にたいする、毎月の調査を命じることが含まれている。

 イスチは今日エクアドルに、これ以外に現代の奴隷労働が存在していることを否定する。人権団体は告発をおこなっているのだが。

 「恒常的に調査をおこなっている。告発がおこなわれているところのみではなく、任意に抽出しておこなっている。わたしがこの職務に就いてから、同じような事象は見つかっていない」、と指摘した。

 また「市民のあいだにますます信頼を高めることが緊要である。いかなるものであれ虐待が存在するならば、市民がこれを告発する。そうすればこれを正すことがより容易となり、保護することができる」、と強調した。

 一方でカリオンは、控訴審が決定するよりも、今回のかつてない判決は、すでにポジティブな影響を持っているという。

 「ほかの188人のフルカワの労働者と元労働者が、オンブズマンにたいして、会社を告発するのを支援してほしいと要請をおこなった」。今回の判決は、正義を求めるこのほかの犠牲者を元気づける、希望をしめしたのだ。

(通算3283) (BBC Mundoによる)

 

(古川拓殖の奴隷労働に抗議するエクアドルの人々。foto:La Hora)

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