報酬目当てにウクライナでロシア兵として戦うことを選択する、シリアの貧しい若者たち
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ロシアと戦うため、軍事訓練を受けるウクライナの民間人 Photo： Celestino Arce / NurPhoto / Getty Images
ウクライナに外国人義勇兵が次々と集まり、戦闘に従事していると報じられるが、ウクライナで戦うために集まる外国人は白人だけではない。特に目立つのは、ロシアがシリアなどから集める志願兵など、戦闘に従事することを希望する貧困国の人々だ。
【動画】ウクライナに戦いにいかなくてはいけないシリアの人々の事情
シリアから集められるロシア傭兵
イスラエル紙「ハアレツ」によると、ロシアの国防大臣セルゲイ・ショイグは3月に、「中東からの1万6000人のボランティアが戦争に参加する用意ができている」と述べ、ロシアが他国から戦闘要員を募っていることを示唆していた。
この数の正確性は定かではないが、3月初めから複数の徴兵所と仲介人産業が実際にシリアで立ち上がり、志願兵が徴兵されてきたようだ。
なお、シリアからは、北に国境を接するトルコとその先の黒海を越えればウクライナに到達でき、地理的にもそれほど大きく離れているわけではない。
シリア人の勧誘に利用されているソーシャルメディア上では、数百人の民間人や民兵が登録しているという。なかには、すでにウクライナとの国境にある基地に到着している者もいる。
そこで徴兵されるシリア人の多くには、ロシアの民間軍事組織「ワグネル・グループ」やロシア軍などに加わってリビアなどで戦った経験があり、ロシア語を話す者までいるそうだ。
なお、ロシアに傭兵として雇用されると、無料の医療と食事に加え、月に1500から3000ドル程度の報酬を得られるそうで、ベテランの指揮官ともなれば、もっと高給が望めると「ハアレツ」は報じる。
これほどの収入はシリアではまず得られないため、命をかけて戦地に行く人が後を絶たないようだ。なお、彼らはシリアを出国する前に前金を受け取れるものの、ロシアは死傷者に対する補償金を支払わない。 独誌「シュピーゲル」によると、シリアは長年の戦争、厳しい制裁などにより、経済は崩壊し、1200万人が充分な食料すら得られない状態にある。
シリアでは公務員の給与が月30～40ドル、兵士の給与が15ドル程度と非常に低い。ここからもロシアのために働くことで得られる金銭が、シリアの人々にとっていかに高額かがわかる。
さらに、ロシアに徴兵されてシリアを出た後、戦線を離脱してウクライナからポーランドに入国し、ヨーロッパに亡命できないかとソーシャルメディア上で議論する人もいるようだ。
シリアにいる人々の、外に逃れたいという切実な思いが想像できる。 なお、ロシアがシリアなどから積極的に傭兵を募っているのは、ロシア兵の死者数の増加に歯止めをかけるためではないかとも推測されている。
この状況を、ロシアは貧困に喘ぐシリアの人々の弱みにつけこんでいると、あるシリアの弁護士は「シュピーゲル」誌に述べている。
一方、シリアでの戦争でシリアを廃墟にしたのは、アサド政権を支援したロシア軍だ。シリアには、プーチンに対して憎しみの感情を持つ人も少なくない。
シリアの現政権に反対するある組織は、戦闘経験のあるシリアの人々に月約1200ドルを支払い、ウクライナでロシアに対抗して戦わせようとしている。
しかし、中立の立場を取りたいトルコは、彼らが領空を通過することを許さないため、この戦闘員らはまだウクライナに到着できていないようだ。
ウクライナで戦いたいアフリカの若者
さらに、給与を求めてウクライナに向かいたがるのは、シリアの人々だけではない。
もっと地理的にウクライナから遠いアフリカの若者も、ウクライナに行くことを願っているようだ。 独メディア「ドイチェ・ヴェレ」によると、ケニアにいる若者は、収入や希望のためにウクライナに行きたいと語ったという。
ケニアの首都ナイロビに住む学生、キマンジ・ナションは、「もしウクライナが、ここでは稼げないような報酬を払うなら、私は間違いなくウクライナで戦います」と同メディアに述べた。 また、失業中の女性ベアトリス・カルキ（27）は、「もしウクライナで傭兵として戦える機会があれば、私は駆けつけます。ケニアで失業のためのうつ病や貧困で死ぬより、ウクライナの最前線で私が死ねば家族に補償されるので、そのほうがましです」と言う。
しかし、アフリカ各国政府の多くは、自国民をリクルートしようとするウクライナ政府のあり方に批判的で、ウクライナに志願兵として行くことを認めていない。
この消極的姿勢の背景には、ロシア政府はアフリカ各国に支援をし、これまで関係を築いてきたことがある。たとえば、自国民への呼びかけをやめるようウクライナ政府に求めたナイジェリア政府は、ロシアから軍事的な支援を受けてきた。 いずれにせよ、貧困国で脆弱な立場にある人々は、良い収入を得るためには、命を失うリスクもある仕事であっても希望するという悲しい事情が浮き彫りにになった。
COURRiER Japon
