地方鉄道、存続の危機   運賃見直し、再構築へ 

地方鉄道、存続の危機 

 運賃見直し、再構築へ 

【編注】朝刊メモ( )の(ア)、本記、30日付朝刊以降使用、

  暮らしを支えるローカル鉄道が存続の危機に直面している。人口減に加え、新型コロナウイルス感染症の流行で乗客数が落ち込んでいるためだ。JRは利用が低迷する路線の収支を公表、沿線地域は廃線に向けた布石だと警戒を強める。政府は運賃制度見直しや、利用促進、バスへの転換などを含む交通体系の再構築を目指しているが、地元の調整は容易ではない。

 国土交通省によると、地域鉄道70事業者(中小私鉄、第三セクター)の2020年度輸送人員は2億9千万人。ピーク時の1991年度と比べ44%減少した。足元はやや回復傾向にあるが、テレワークの浸透により「需要が戻らない可能性もある」(政府の2022年版交通政策白書)。

 大都市の路線や新幹線の利益でなんとかローカル線を維持してきたJRも事情は同じだ。JR西日本は4月、利用者が少ない路線の収支を初めて公表。沿線地域からは「狙い撃ちにされたようだ。生活弱者の足の確保は、社会政策として考えないといけない」(平井伸治鳥取県知事)など、廃線を懸念する声が噴出した。

 JR西から、芸備線の一部区間について存廃を含めた協議入りを求められた広島県の担当者は「利用は少なくても地元にとっては便利な交通手段。利用促進策を尽くしてから議論すべきだ」と反対する。

 一方、事業者も苦しい。国交省のアンケートでは「一民間企業が果たせる責任はおのずと限界がある」と、経営の厳しさを訴える声があった。

 国交省は今年、二つの有識者会議を設置。バス転換や観光列車運行など利用促進策を含めた地域交通の再構築、運賃制度見直しを検討してきた。

 これまでの議論を受け、路線維持や運行本数を増やすなどサービス向上を沿線地域に説明し、合意を得れば、国の認可なく運賃を値上げできる仕組みを導入する方向だ。バス高速輸送システム(BRT)へ円滑に転換できる環境も整備する。

 路線の存廃を巡る地域の協議は難航するケースが多く、国交省が主体的に関与する仕組みも設ける。ただ、いずれも決め手に欠き、ある事業者は「国交省が協議に入るだけなら、大きく変わるとは期待できない」と漏らした。

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