「黒い雨」胎内被爆50人の審査中断 基準に不備、母死亡で評価困難

「黒い雨」胎内被爆50人の審査中断 基準に不備、母死亡で評価困難

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毎日新聞

「黒い雨」の体験者への被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の控訴審判決を前に、広島高裁に向かう原告団=広島市中区で2021年7月14日午後2時14分、山田尚弘撮影

 広島に降った原爆投下直後の「黒い雨」に遭った母親の胎内で被爆したとして、行政に被爆者健康手帳の交付を求めている少なくとも約50人分の審査が中断していることが判明した。黒い雨の胎内被爆者として認められるには、母親が黒い雨に遭った可能性があることと、一定の疾病にかかっていたことを示す必要があるが、母親が死亡していた場合の審査方法が定められていないためだ。審査実務を担う広島県と広島市が厚生労働省に対応を照会しており、同省が検討している。 【被爆1カ月の広島】駅前に出現した「ビール立飲所」(爆心地から1900m)

 厚労省は、黒い雨の援護対象区域外にいた原告84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決(2021年7月)を受け、救済拡大を図るため4月1日から新たな基準に基づく審査を始めた。①黒い雨に遭ったか、その可能性が否定できない②がんなど11種類の疾病のいずれかにかかっているか、白内障の手術歴がある――の要件をともに満たした人について被爆者と認め、手帳を交付する。長崎は新基準の対象外となっている。

 広島県、広島市には、高裁判決確定以降、援護対象区域外で黒い雨に遭ったとして約3000人(22年7月21日現在)が手帳の交付を申請。このうち約50人が原爆投下時に黒い雨を浴びた母親の胎内にいたと申告している。

 被爆者援護法などに基づき、黒い雨の胎内被爆者として認められるには、母親が新基準に合致することを証明する必要がある。しかし、すでに申請者の母親の大半が亡くなっているとみられる。県や市は、既に申請者の母親が死亡している場合、審査が難しいとして、手続きを中断し、国に対応を照会している。

 厚労省の担当者は「黒い雨による胎内被爆で申請している人の審査方法について検討している」と話している。【矢追健介】

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