「半旗掲げぬ」と投稿 安倍元首相と旧知、長野・佐久市長に聞く

「半旗掲げぬ」と投稿 安倍元首相と旧知、長野・佐久市長に聞く

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毎日新聞

半旗の掲揚をしないと表明した柳田市長のツイート

 27日に予定されている安倍晋三元首相の国葬について、長野県佐久市の柳田清二市長(52)がツイッターで「佐久市では、安倍元総理の国葬に際し半旗の掲揚は行いません」と投稿した。国葬については各種世論調査で賛否が分かれる中、「自民党葬とすることが良かった」とも言及。お互いが国会議員秘書だったころから、安倍氏と顔を合わせることもあったという現職首長が、あえて国葬に関する見解を発信し続ける理由を尋ねた。【渡辺薫】

 7日昼過ぎ、柳田氏は自身のツイッターに、国旗と国会議事堂が写った画像とともに「半旗の掲揚はしない」と投稿。「政治家に対しての評価と批判は常に存在する」とした上で「大半の国民の気持ちが一致した時に半旗は掲揚すべき」とも記載した。9日にも市役所や学校での半旗・弔旗掲揚に「多くの市民の賛同は得られない」と主張。「論争を呼び、安倍元総理と旧統一教会との関係を市民の話題としながら対立の中で半旗掲揚することは、弔意を表現するシーンにはなり得ない」と続けた。

 柳田氏によると、安倍氏が7月8日に銃撃され亡くなり、市は同11~12日、庁舎に半旗を掲げた。しかし、9月6日朝の部長会では、国葬の際に半旗を掲げないことを自身が提案し決定した。銃撃直後は「(市民が)みんなで弔意を示そうと思っていると理解した」が、安倍氏をはじめ政治家と旧統一教会を巡る問題が出てきたことによって「今は国民、市民全体で弔意を示そうという空気はないと判断した」という。柳田氏は「弔旗や半旗は主権者の弔意を示すものだから、佐久市民の大方が弔意を示す空気を感じれば弔旗を出す。市長の弔意であれば自分の家でやれという話だ」と主張する。国葬の是非については「私が決めることではないので発言するつもりはない」としつつ、「自民党葬であれば異論も出ないし、要人が来る場合の警備上の費用も国から出るはず」と指摘した。

 約30年前、柳田氏は自民党衆院議員の秘書を務めていた。自身が仕えた議員の議員会館の事務所の隣室は、安倍氏の父で自民党幹事長も務めた晋太郎氏の部屋だった。秘書だった安倍氏とは廊下などで顔を合わせればあいさつを交わしたこともある。市長としても、2019年10月に佐久市にも大きな被害をもたらした台風19号からの復興に当時の安倍政権の対応が迅速だったと評価し、「災害対応に強い政権で、現場主義で対応してもらい救われた部分があった」と振り返る。

 「安倍さんが銃弾に倒れたことへの怒りもあるし悲しさもある。個人的には半旗を出したい思いもある」と話す。一方で「そうなると安倍さんの国葬や死にいろんな論評が加えられることになる。弔う時にわざわざ論争を巻き起こすことをすべきでない」とも語る。

 柳田市長の姿勢について、市民の意見もさまざまだ。国葬に賛成という30代の男性会社員は「市長が市として弔旗を掲げないということをツイッターで表明するのは、ツイッターを見てない人もいるし賛成はしない。する、しないを市民に問う機会があってもよかったのではないか」と疑問を投げかけた。70代の無職女性は「在任期間の長さもあり、最初は国葬について賛成だったが、旧統一教会とのつながりや膨らんでいく費用をみて、反対に転じた。市としても半旗掲揚の必要はないし、市長の判断は妥当ではないか」と支持する。

 市民の反応だけでなく、ツイッターに寄せられる意見も賛否が分かれている。柳田氏は「極めて自然なこと」と受け止めた上、「論点を訴えるのは政治の役割だと思う」と発信を続ける意思を示した。  

◇やなぎだ・せいじ

 衆院議員秘書や佐久市議、長野県議などを経て、2009年4月に佐久市長選に無所属で立候補し初当選。21年4月に無投票で4選を果たした。

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