反撃能力“配備”の沖縄、有事には「戦場」懸念 安保3文書改定

反撃能力“配備”の沖縄、有事には「戦場」懸念 安保3文書改定

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毎日新聞

陸自第15旅団の観閲式で整列する各部隊。今後、部隊の増強が計画される=那覇市の陸自那覇駐屯地で2022年11月6日午前10時13分、比嘉洋撮影

 政府が16日、安全保障関連3文書を改定し、反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有する政策転換に踏み切ったことに対し、反撃手段となる長射程ミサイルの配備が想定される沖縄の島々の住民からは「有事で戦場になる危険が高まる」と懸念する声が上がった。玉城デニー沖縄県知事は「沖縄が攻撃目標となる事態は絶対に招いてはならない」とし、外交による緊張緩和に取り組むよう求めるコメントを出した。  

◇「国民の議論、経ないまま進む」

 政府は中国の軍事力強化に対し、台湾に近い南西諸島への自衛隊配備を進める。沖縄県の宮古島に2019年3月、陸自宮古島駐屯地を開設し、1年後にミサイル部隊を配備。23年3月までに同県の石垣島にも陸自駐屯地を置き、ミサイル部隊を配備する予定だ。今後は相手国のミサイル発射拠点などをたたく長射程ミサイルの配備も想定される。

 宮古島駐屯地前で農業を営む仲里成繁(せいはん)さん(69)は「既成事実が重ねられ、住民が文句を言えない状態になっている」と語る。仲里さんは自衛隊の配備に反対してきたが、島では自衛隊車両が行き来するようになり、11日は宮古空港から空自のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が展示飛行した。仲里さんは「配備を足がかりに自衛隊のいろいろな部隊がなし崩し的に宮古島を使っている印象だ。有事のリスクが高まる方に突き進むが、国民の議論を経ないまま物事を進めていくのは民主主義国家と言えるのか」と問う。

 建設工事が進む石垣島の陸自駐屯地近くで花の卸売業を営む高宮耕(こう)さん(54)も「台湾有事に米軍が介入すれば、自衛隊の基地があるここも必ず戦場になる。基地の強化がなし崩し的にどんどん進められて悔しい。何かあれば、妻だけでも、すぐに九州にいる娘の元に避難させるつもりだ」と懸念を募らせる。  

◇玉城知事「詳細な説明や協議の機会を」

 改定された防衛力整備計画では那覇市を拠点とする陸自第15旅団を増強することなども明記された。玉城知事は発表したコメントで「今後、詳細な説明や協議の機会を設けていただきたい」としたうえで、「沖縄の基地負担の軽減は米軍と自衛隊を併せて考える必要がある」と指摘。「軍事力の増強による抑止力の強化がかえって緊張を高め、不測の事態が生ずることを懸念している。米軍基地が集中しているがゆえに沖縄が攻撃目標になる事態は絶対に招いてはならない」と強調した。【宮城裕也、喜屋武真之介、比嘉洋】

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