東京都労働委員会は組合の申立てを棄却し、不当労働行為を認定せず(交通機械サービス事件)

 

2019年5月15日、 東京都労働委員会より「交通機会サービスによる動労東京への支配介入事件」に対する命令が出された。 この命令は組合の「不当労働行救済申立てをすべて棄却する」という反動的な命令であった。

この事件は、(1)有期雇用契約者の雇用契約がこれまで6ケ月であったものを突如3ケ月に短縮したこと、(2)従来から長らく慣例・慣行として行われてきた、希望者全員が65歳の定年後も再雇用されてきたにもかかわらず、組合の支部長に適用しないかったこと、(3)組合員が一旦出した退職届けを、その取り消しを申し出たにもかかわらず、それを認めず、退職に追い込んだこと、これらの行為が組合つぶしの団結破壊であり、不当労働行為として救済の申立てを行ったものであった。

東京都労働委員会が命令の中で棄却の理由として示したものは、(1)に対しては、契約期間が3ケ月に短縮されたとしても、契約の更新がされているから、実質的不利益が生じているわけではない。また(2)については慣例、慣行があったとは認められないから、嘱託としての再雇用拒否は、特に組合員を職場から排除しようとしたものではない。(3)については、退職届けの取り消しを申し出た時には既に次の欠員補充者が決まっていたから、会社側に正当な理由があった、というものであった。

しかしながらこれらの理由はいずれも極めて不当なものである。なぜならば、雇用契約が6ケ月であったものを3ケ月に短縮したことは明らかに労働者にとって不利益変更であり、それなりの正当な理由がなければならないはずである。労働員会は会社側の理由が正当か不当かを十分に検討し判断することなく、実質的不利益が生じていないということにすり変えて、当然にしなければならない判断を回避したのである。

支部長に対する雇用延長、再雇用について、希望者全員が嘱託採用されてたいたという慣例・慣行が否定された判断はさらに不当なものである。組合は直接の職場である八潮事業所については十分に調査し、希望者全員が嘱託発令されている事実を証明した。しかしなら労働員会命令は、大井事業所の定年退職者についても希望者全員が嘱託となっている事実があるのかどうか不明であるから、「したがって、会社において、定年退職者の嘱託採用希望者は一律に嘱託採用されるとの組合の主張は認められない。」として、慣例・慣行の存在を否定したのである。同じ会社のなかのことであるから、八潮事業所の例から推定して当然に慣例の存在が認定されるべきところ、大井事業所の個々の事例まで希望があったかなかたの証明を組合側に求め、それが出来ていないから組合側の主張する慣例があったとはいえないというのが労働員会の示した判断である。

支部長に対する再雇用拒否が行われる直前まで、希望者全員が嘱託採用されてきたという事実を裏付けるものとして、本社幹部と八潮事業所職員との交流会の席で、「この会社は定年も後70歳まで働けるところです」と言っていた重要な組合側にとって有利な事実も、不当労働行為を判断する事実認定として取り上げられなかった。

退職届けの取り消しが認められなかったことに対して会社側が示した理由である、「すでに欠員補充の対象者が決定している」といことについても、これが不当なものであるにもかかわらず労働員会は十分に検討することなく、それを採用してしまっている。当該組合員が退職届けを出すことは会社側として予定されていたことではないから、 退職届けが出された後、その取り消しを申し出たときまでの日数を見れば、そのような短期間に欠員補充の対象者が確定したとは到底考えられない。組合員の数を一人でも少なくしようとする会社側の意図は極めて明らかである。

またさらに組合側が指摘した重要な事実として、突然の副所長3人の発令がある。八潮事業所の13人のうち8人が組合員として組織されていたこれと対し、組合員の数を相対的に低くするため、会社は大井事業所の3名を当時の組織規程にはなかったにもかかわらず、八潮事業所の副所長として発令したのである。このような重要な組合つぶしの事実もまた、労働員会の命令のなかでは無視されているのである。

組合が不当労働行為であると主張している根拠は、これら一連の事実が動労東京八潮事業所分会が結成されたことを契機として、その直後からつぎつぎと行われてきたことである。東京都労働員会はこのような会社側の急激な変化に注目することなく、判断の根拠となる事実認定に採用しなかった結果として、不当な申立棄却の命令を出したのである。

 

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