病院の窓に「もうカンベン」「五輪やめて」訴え続けた院長が憤慨 手のひら返しのテレビ報道に苦言も〈dot.〉(AERA dot.)

病院の窓に「もうカンベン」「五輪やめて」訴え続けた院長が憤慨 手のひら返しのテレビ報道に苦言も〈dot.〉(AERA dot.)

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「五輪やめて」「もうカンベン」などのメッセージが張り出された立川相互病院(撮影/編集部・國府田英之)

 菅首相は大会中、「人流が減っている」として中止を否定し、小池都知事は五輪のテレビ観戦により「ステイホームにつながっている」などとプラスに評価した。だが、実際はどうか。会場のそばに出向き競技が見える場所を探して観戦した人もたくさんいて、中には観戦者が殺到して密が生まれたケースもある。

 「五輪を強行するのだから、もう都の要請は聞かない」と、五輪開催をきっかけとして通常営業に踏み切った飲食店も多くあり、店をのぞくとたくさんの客が詰め掛け、酒と、マスクなしでの会話を楽しんでいる。

 メディア、特にテレビは五輪が始まると、コロナ関連のニュースが一気に減り、競技の中継と、選手のメダル獲得を笑顔で伝え続けた。高橋院長は苦言を呈す。 「まったくテレビは見ませんでしたが、一度確認したら各局とも五輪の中継ばかりでした。競技を中継したり盛り上がりを伝えたいのなら、それはそれで良いと思います。

 ただ、この感染爆発はまさに災害なんです。台風や地震などの災害時と同様に、画面にテロップを出し続けて感染者数を示したり外出自粛を呼びかけるなど、危機的な状況であることを同時に伝え続けてほしかったと思います」

 感染爆発の中、政府は突然、感染者が急増する地域で、重症化リスクの低い中等症の患者は自宅療養とする方針を打ち出し、与野党から猛烈な批判を浴びた。結果、政府は中等症でも入院可能と方針を転換した。

■なぜここまで放置したのか

 高橋院長は、 「医療関係者は病床ひっ迫を訴えていましたが、政府や都もその状況を強く発信せず、報道も8月2日の夕刊まで各紙ともほとんどノータッチで、世の中は五輪一色でした。ところが、その日の夜に政府が、自宅療養者の範囲について、突然に方針転換しました」 と、そうした政府の姿勢に不信感を隠さない。

「現実問題、感染者がここまで増えた以上、今までの基準で入院させていたら病床は一日で埋まってしまいます。政府としては止むを得ない判断だと思いますし、感情的に反対しても意味がないと思います。ただ、ならばなぜ、もっと早く医療がひっ迫しているというメッセージを発信しなかったのか。首相も、『(五輪期間の)人流は減っている』などという前に、国民に対して伝えるべき危機があったということ。なぜこうなるまで放置し、突然方針を変えたのか。能力を疑いますし、良心に欠けているとも思います」

 高橋院長は、かつてはオリンピックやサッカーのワールドカップなどを楽しみに見ていたという。 「頑張ってきた選手は立派ですし、準備にあたった人たちも大変な中でやってこられたでしょう。そのこと自体はとても尊敬しますが、やはりこの状況で五輪はやってはいけなかった」

 東京五輪は幕を閉じたが、五輪後に開催されるパラリンピックの中止を訴えたうえで、こう話す。 「若い人は死者数が少ないという楽観的な意見を耳にします。なぜ死者数が少ないか。それは病院で重症化しないように治療してきたからです。われわれも一年以上、経験を蓄積し、薬剤の使い方もわかってきました。看護スタッフも飛沫をあびながらも患者さんのたんを吸引し、肺炎を防いできました。全国の多くの医療従事者の献身によって、食い止められてきたのです。今後、病院に入れず自宅療養で亡くなってしまう方、特に40代から50代が増えてくるでしょう。そうした方を一人でも減らすために何ができるか、知恵を絞り、全力で対応していきたいと思います」

(文/AERA dot. 編集部・國府田英之)

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