「心が折れてつぶれる」コロナ手当は1度だけ 沖縄の民間病院の看護師 県立病院と格差

「心が折れてつぶれる」コロナ手当は1度だけ 沖縄の民間病院の看護師 県立病院と格差

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沖縄タイムス

看護師が感染を防ぐため身に着けているというキャップやフェースシールド、N95マスク(提供)

 新型コロナウイルス感染拡大が断続的に続く沖縄県内で、感染患者の入院治療に最前線で当たる医療従事者特殊勤務手当(危険手当)の格差が生じている。「心の置き所がない。もう耐えられない」。昨年2月に県内で感染が初確認されて以降、手当が一度しか支給されていない民間病院で働く看護師は訴える。(社会部・篠原知恵)

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 第1波は昨年春。以来、日常は一変し、防護服に身を包む。病院の方針に従いこの1年半、県外に出ることも会食も自粛。ワクチン接種後も「家庭や院内にウイルスを持ち込むのでは」と気を張り詰めてきた。

 コロナ感染は、患者1人の看護に本来の倍以上の人手が必要だ。その上、レッドゾーン内外の出入りも自由にできず、薬剤や物品の準備、処置に時間がかかる。

「5時間以上も防護具を身に着け、十分な水分補給や食事休憩ができないこともあった。トイレを我慢してぼうこう炎になった仲間もいる」。密閉性の高い「N95マスク」などの着用で、鼻や耳は痛む。

■嫌気が差して職場を去った同僚

 未曽有の感染拡大となった直近の第5波は、コロナ病床が最も逼迫(ひっぱく)し、勤務する病院も病床拡充を余儀なくされた。「1年余りの疲労に加え、業務負担や緊張がさらに増した」。労働環境に嫌気が差して職場を去った同僚もいる。次から次に患者は来るが「ゴール」は見えない。「これから、あと何波来るのか。考えると仕事を続ける自信がない」

 病院からの手当は昨年度に一度、数万円が振り込まれたきり。7月に「8月支給」だと伝えられたが、ふたを開ければ支給は遅れに遅れた。その後、手当の話は一切ない。月給はコロナ前とほとんど変わらない。

■「なぜこれほど差が出るのか」

 同じように防護具姿で患者に対応する県立病院の医療従事者には、1日の手当3千~4千円に加え、感染拡大時の特別手当として10万~25万円が出る。ワクチン接種のアルバイトで時給5千円前後を受け取る看護師もいる。「周囲を見ると、よりしんどい。なぜこれほど差が出るのか」。命を救う仕事にやりがいを感じるが、格差に加え、感染収束が見通せない日々にもどかしさが募る。

 一時期はよく、「医療従事者に拍手を」と耳にした。弁当や菓子の差し入れが届き、心が救われることもある。それでも。

 「このままだと心が折れ、つぶれる」。冬に第6波の到来も取り沙汰される。

「同じ感染リスクと負担の中で働いても、手当もない医療従事者の存在を知ってほしい。格差の解消につながれば」と願う。

■「離職を生まない施策を望む」と労組

 沖縄県医療福祉労働組合連合会書記長・井樋口美香子さんの話

 この1年半、医療従事者は先の見えない感染状況の中で必死にモチベーションを保ってきたが、それに見合う対価がなければ心は折れる。現場から「大切にされている実感がない」「辞めたい」の声もよく聞く。

 4月以降、国や県の補助金交付に遅れが生じている。その中で体力のある病院は手当を払えるが、コロナ対応で経営に厳しさを増す病院もあり、病院任せの対応には限界がある。各病院にコロナ病床拡張を要請した以上、行政は責任を持って、迅速に補助金の交付を進めるべきだ。

 県の協力金は待遇改善などを目的とするが、実際に医療従事者にどれほどの額が行き渡っているのか、待遇改善につながっているのか、しっかり確認する必要がある。

 十分な手当がない状態で長期のコロナ対応に耐える医療従事者がいる一方で、例えば看護師の場合、ワクチン接種会場のアルバイトは時給5千円前後もらえるという。

 矛盾を重ねて離職につながらない施策を望みたい。最低でも、県立病院並みの手当が各重点医療機関で働く人たちに行き渡るよう、国や県は対応を尽くすべきではないか。(談)

■国や県が出す協力金

 どう使うかは病院次第  新型コロナウイルスに対応する医療従事者の「特殊勤務手当」への活用を想定した重点医療機関向け補助金は主に2種類ある。県の協力金と、国の入院受入医療機関緊急支援事業補助金だ。ともに医療従事者の待遇改善などが目的だが、実際にどう使うかは各病院の裁量に委ねられる。

 県が待遇改善の施策で「いの一番」に挙げるのが協力金だ。軽症・中等症患者受け入れに32万円、重症に144万円などを払う。ただ待遇改善だけでなく院内感染対策にも使える。「各病院の実情に応じ使えるよう、縛りはない」(県)という。国の補助金も待遇改善や院内感染対策などに使える仕組みだ。

 病院側も、手当支給に気をもんでいる。民間病院の関係者は「離職に直結する問題。他病院とも話しづらく、県が基準を示し補助してほしい」。別の関係者は「県の協力金で日々の手当を賄っているが、経営は厳しく県立には劣る。昨年度は国の補助金で一時金を出しカバーした」という。

 感染患者の入院治療に当たる立場は同じにもかかわらず、勤務先によって手当に差が生じることを防ぐため、独自に一定の基準を設けて手当を全額補助する自治体も少なくない。東京都は対応に当たる医療機関に、医療従事者1人1日5千円を上限に手当を全額補助。大阪府も似た仕組みがある。

 沖縄県は手当に特化した補助事業はなく、手当の基準も示していない。

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