コロナ禍で生活困窮、まさか自分が 年金受給者、学生…切実な声 経済、社会全体の問題に

コロナ禍で生活困窮、まさか自分が 年金受給者、学生…切実な声 経済、社会全体の問題に

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熊本日日新聞

メーデーに合わせ、県労連などが開いた物資配布に集まった人たち=5月1日、熊本市中央区の白川公園

 新型コロナウイルスの感染拡大による雇用の悪化や消費の落ち込みで、生活に困窮する人が増えている。社会保障の充実や改革を求める声は、熊本県内でも高まっている。

 「まさか生活保護を受けるなんて」。9月に保護を申請した熊本市北区の女性(62)は唇をかんだ。

 認知症の夫(77)を世話しながら年金とパート収入で生活する中、勤め先のスーパーをコロナ禍で解雇された。家賃も払えなくなったが、生活保護をすんなり受給することはできなかった。

「私に受給資格があるとは思っていなかったし、実際に窓口では対象外と言われたこともある」

 熊本市では2020年度、1万1968世帯が生活保護を受給。15年度以来の増加に転じた。熊本労働局がまとめた20年度の有効求人倍率は1・19倍。前年度を0・38ポイント下回り、過去最大幅の下落となった。一方、政府は物価下落などを理由に、13年から3年かけて基準額を引き下げた。平均6・5%で引き下げた結果、保護費の削減額は計約670億円に上った。

 浅井勝也さん(79)=熊本市中央区=の毎月の受給額は1万4千円引き下げられ、9万3千円になった。16年前に首の神経を手術し、経営していた居酒屋を廃業。コロナ禍ではマスクや消毒液の出費がかさみ、「万が一の香典代」として毎月確保していた3千円が残せない月も増えた。

 知人の中には、コロナ禍で苦境に陥った飲食店主も多い。浅井さんは「生活困窮は特別な人たちだけの問題ではなく、社会や経済全体の問題だ」として、困窮の度合いに応じた救済や保護の拡充を求めている。

コロナ禍では、学生の困窮も社会問題化した。  熊本市の医療系専門学校に通う女子学生(22)はひとり親の母親に負担をかけないよう、月額6万円の貸与型の奨学金と貯金で学費や生活費を賄う。以前は別の専門学校に在籍。卒業後に2年間働き、資格取得のため今の学校に入学した。前の学校でも就学資金として月額4万8千円の貸与を受けており、月に1万6千円を返済している。

 今の専門学校は給付型奨学金の対象外。コロナ禍が続けば、就職や将来の生活に不安があると言い、「学生の選択肢を増やすには給付型の拡充が必要。若い世代が雇用を確保し、安心して働ける社会になってほしい」と望んでいる。

 生活困窮を巡る社会保障政策として、政府与党は収入の少ない年金生活者を対象にした給付金の新設や、介護保険料の見直しを進めてきた。野党は低所得者向け給付金の拡充や消費税減税を訴えている。(堀江利雅、川野千尋)

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