社説[相次ぐ大規模演習]沖縄の「要塞化」を懸念
防衛省統合幕僚監部が今月下旬に行う自衛隊統合演習の一環で、民間港などを使用した大規模訓練を県内各地で予定していることが分かった。
石垣港に海上自衛隊の輸送艇が寄港し、与那国島の祖納港との間で人員や車両の輸送訓練を行う。
中城湾港へは、防衛省が借り上げた民間船で県外から部隊や物資を輸送する訓練を行うという。
海の玄関口として離島県沖縄で重要な役割を果たしている民間港が、軍事訓練に使用されるのは異例だ。
形式的な手続きを取るだけで十分な説明がなければ住民の不安は解消されない。
玉城デニー知事は11日の記者会見で「情報収集に努め、関係機関と連携して適切に対応する」と述べた。今回の訓練について県は規模や内容などを注視する姿勢を見せている。
県内で予定されている訓練はそれだけではない。
宮古島では地対艦ミサイル部隊がシミュレーションによる模擬射撃を実施する。
北大東村の米軍沖大東島射爆撃場では空自の戦闘機や陸自のヘリコプター、海自の護衛艦が実弾射撃訓練などを実施する。
日本が直接攻撃を受ける「武力攻撃事態」を想定し、実践を見据えた訓練になるという。 沖縄本島や久米島、宮古島、与那国島で実施する「統合電子戦訓練」は、電子戦部隊の県内配備に向けた下地づくりの側面もあるようだ。
■ ■
今回の統合演習は、台湾有事や尖閣諸島周辺の緊迫化を意識したものとみられる。
中国軍機の防空識別圏進入の急増など、台湾に対する軍事的な威嚇の常態化には確かに不安を覚える。威圧的な行動や力による現状変更の動きには強く抗議したい。
一方、航空自衛隊は今月、宮古島・石垣島の北方で米空軍と共同訓練を実施した。 防衛省は制服組トップの山崎幸二統合幕僚長と米インド太平洋軍のアキリーノ司令官が与那国島の陸自駐屯地を訪問したと公表した。
先月初めには沖縄南西の海域で米英の空母3隻と海自が共同訓練を行った。
集中的な共同訓練はいずれも中国の動きをけん制する狙いがあるとみられる。 もう一つの大きな特徴は沖縄周辺の「戦場化」を前提にしていることだ。 こうした動きがエスカレートすれば、逆に沖縄周辺の緊張が高まりかねない。
■ ■
沖縄の米軍基地は朝鮮戦争やベトナム戦争、アフガニスタンやイラクへの攻撃で出撃拠点や中継基地となってきた。
近年は自衛隊の「南西シフト」が鮮明になり八重山や宮古、沖縄本島、奄美へ部隊の配備や拡充が進められている。
安全保障関連法の施行後は、共同訓練などで日米の軍事一体化も加速している。
政府は沖縄の基地負担軽減を強調するが現実に進行しているのは沖縄の「軍事要塞化」である。どのように負担軽減を実行していくのか具体策を示すべきだ。
