ソテツ味噌を唯一作っている村 「地獄」と呼ばれた時代 人々を救った植物「保護」へ

ソテツ味噌を唯一作っている村 「地獄」と呼ばれた時代 人々を救った植物「保護」へ

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沖縄タイムス

葉を食べられて枯れたソテツ=9月、粟国村東

 沖縄県内で唯一ソテツみそを造っている粟国村で、食材として親しまれてきたソテツの保護条例制定を目指す動きがある。

 チョウの一種・クロマダラソテツシジミの食害に遭う木が目立ってきたからだ。粟国村ソテツ味噌(みそ)生産組合(安谷屋英子代表)ら有志は、対策や条例づくりを求める署名112筆を村や村議会に提出。村は対策委員会の立ち上げも検討している。(南部報道部・又吉健次)

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■「ソテツ地獄」で飢えしのぐ

 ソテツは高さ5メートルほどの常緑低木。第1次世界大戦後の不況期、「ソテツ地獄」と呼ばれた時代は、沖縄の農民らが毒抜きを誤ると死ぬこともあるソテツで飢えをしのいだことでも知られる。

 同組合書記会計の與那則子さん(65)は「80~90代の島民はソテツで飢えを免れており恩恵を感じる方もいる」と語る。村出身者の中には、旧暦12月になるとソテツの粉末を島から取り寄せてジューシーを作り「これを食べないと年を越せない」と話す人もいるなど特別な食べ物だ。

 署名活動は今年5月、村東の民家に生える15本ほどがチョウに食い荒らされたという連絡が、村の行政相談員の玉寄義治さん(65)にあったことがきっかけ。

 殺虫剤を買ってまいたが、数日すると戻ってきた。これでは問題解決にならないと、玉寄さんは與那さんと相談して7~9月に村民から、村や議会に対応を求める署名を集めた。

 署名を呼び掛けた文書では、枯れたソテツが目立つと景観上も良くないと指摘。条例制定で文化の継承、特産品づくりで雇用の場創出-などを求め、10月1日までに村と村議会に提出した。  

■個人所有のソテツも

 高良修一村長は「ソテツ保護は大事なこと。村でも対応を検討したい」と説明。村役場でも条例づくりや保護の議論が始まったが「個人所有のソテツが多く、私有地にあるものに触れていいのか」といった課題もあるという。

 玉寄さんは村中央公民館長時代の4年前、ソテツの料理講座を企画してパエリアにして食べた。「ソテツ文化継承に取り組む奄美大島(鹿児島県)の笠利町打田原では食品開発にも取り組んでいる。経済活性化につながると知ってほしい」と語る。

 與那さんは「粟国はソテツの島と呼ばれてきた。いま保護しないと島の文化が伝えられなくなるとの危機感がある。村もできることから取り組んでほしい」と願った。  

[ソテツの食べ方]

ソテツの白い実を天日で数日乾燥させた後、水に1週間ほどつけてあくを抜き、再び乾燥させた上で粉末状にする。無味のためだしを加えて味をつけて食べる。かつては団子やもち、蒸しパン、現在は雑炊などとして食べることが多い。村ソテツ味噌生産組合は年間200~300キロを生産する。

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