かつて国境のあった鹿児島県・与論島と沖縄県の間の海上で、復帰50年を祝い互いに手を振る沖縄県側の住民（奥）と与論島側の住民＝2022年4月28日午後0時7分、喜屋武真之介撮影

　サンフランシスコ講和条約が発効して70年となる28日、沖縄県内各地で集会が開かれた。1952年4月28日の条約発効で日本は独立を回復したが、沖縄や奄美群島などは米国統治下に留め置かれたため、沖縄では「屈辱の日」と呼ばれる。沖縄は日本本土復帰からまもなく50年を迎えるが、重い基地負担は変わらず、沖縄本島北端の国頭村（くにがみそん）での記念式典中にも米軍輸送機オスプレイが上空に飛来する場面があった。

　沖縄本島北端と鹿児島県の与論島の間にある北緯27度線付近の海域では、国頭村と与論町から出航した船約20隻が集まり、海上集会を開いた。この海域は53年12月に奄美群島が日本に復帰した後、日本と米国統治下の沖縄を隔てる「国境」となった。63～69年には毎年、沖縄と与論の双方から出航した船が落ち合い、早期復帰を求める「海上集会」を開いた歴史があり、今回は2012年以来10年ぶりに再現した。

　この日は国頭村と与論町の住民ら約80人が海上に出て、双方の代表者が「祖国復帰運動を学ぶことで平和への思いを共有し、平和への懸け橋となることを目指す」などとあいさつした。友好平和宣言が読み上げられ、復帰運動で盛んに歌われた「沖縄を返せ」を合唱。参加者らは万歳三唱したり、手を振り合ったりした。

　68年の海上集会に参加した金城健一さん（77）＝沖縄県大宜味村＝は「当時を思い出し、『沖縄を返せ』を大きな声で歌った。沖縄は日本に返還されたが、基地が集中する中身は変わらない。沖縄に基地を押しつけず、平等に負担してほしい。不条理にくじけず訴えていきたい」と語った。

　復帰運動を直接知らない世代も参加した。72年生まれの「復帰っ子」らで結成した団体の代表を務める比嘉盛也さん（49）＝沖縄県中城村＝は「復帰後の平和な世の中しか知らないが、皆が一生懸命に闘った時代があったんだと思った。当時のことを勉強し、後世に伝えたい」と話した。

　集会後、参加者らは港から沖縄本島最北端の辺戸岬まで行進。辺戸岬で記念式典を開き、海を隔てても見えるようにと、与論側と沖縄側の双方でかがり火をたいた。

　那覇市中心部の「県民広場」でも「屈辱の日」に合わせた集会があった。労働組合関係者や県政与党会派の県議ら70人以上が参加し、米国統治時代から続く沖縄の「軍事要塞（ようさい）化」を改めるよう求めた。参加した沖縄県糸満市の中学教諭の女性（55）は「米軍基地が集中している沖縄は戦争が起きれば攻撃対象になり、壊滅的な状態になると思う。基地の返還が進み、日本に復帰して良かったと思いたい」と語った。

【竹内望、比嘉洋】