防衛費「どんぶり勘定」のヤバい現実…過去最高額を越えて「6兆円」の可能性も!
防衛費が過去最大に!

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防衛省は2023年度防衛費概算要求を省議決定した。要求額は過去最大の5兆5947億円で、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」としているが、調達する兵器などの単価を一切示さない「事項要求」ばかりとなり、透明性を欠いた。
【写真】防衛省の「どんぶり勘定」が明らかになった資料
予算案や概算要求は個別案件を積算してつくられる。単価がわからなければ、総額を決められるはずがない。単価を示さないのは説明責任の放棄であり、秋の臨時国会で野党に質問の糸口さえ与えない隠蔽工作にも等しく、一方的な政権運営が目立った安倍晋三元首相でさえ、こんな手法は取らなかった。
お墨付きを与えたのは岸田文雄首相だ。看板政策や防衛費などに幅広く事項要求を認める概算要求基準を7月に閣議了解したからだ。 防衛省は5兆5947億円とは別の事項要求を年末の予算政府案決定までに上乗せするとしており、最終的な予算額は6兆円台半ばまで膨らむ見通しだ。
このペースで毎年1兆円ずつ増やしていけば、5年後には約11兆円となり、自民党が参院選挙の公約で掲げた「対GDP比2%以上」が実現する。そうなれば、巨額の国防費を計上している米国、中国に続く世界第3位の軍事大国に躍り出る。
防衛費を増やす理由として、ロシア、中国、北朝鮮の脅威を挙げているが、いずれの国も突然、日本周辺に現れた訳ではない。ロシアのウクライナ侵攻や中国による台湾近海へのミサイル試射で高まった人々の不安な気持ちに乗じたとしか思えず、「必要最小限度の実力の保持」(令和4年版防衛白書)との政府見解は空洞化している。
財政健全派かと思いきや…

安倍晋三元首相[Photo by gettyimages]
岸田氏は先の通常国会で、自民党が掲げる大幅な防衛費増について問われ、「内容と予算、財源の検討をセットで進めていく」と繰り返し述べ、慎重派とみられた。財政再建を優先したい岸田氏にとって、安倍氏ら積極財政派が主張する極端な防衛費増は避けたい思惑があった。
6月7日に策定した「経済財政運営と改革の基本指針(骨太の方針)」をめぐり、岸田氏は看板政策である「新しい資本主義」を反映させることを狙い、防衛費積み増しの規模や時期などに触れるつもりはなかったとされる。しかし、蓋を開けてみれば、財政健全化に向けた取り組みは後退し、代わって防衛費の拡大など財政出動色が強まった。
安倍氏が原案にかみつき、安倍派の会合などで政府に踏み込んだ対応を繰り返し要求。抗しきれなくなった岸田氏は最終的に防衛力を「5年以内に抜本的に強化する」と明記し、「注釈」だった北大西洋条約機構(NATO)がGDP2%以上の国防費を掲げていることを「本文」に昇格させた。
「骨太の方針」で押し込まれた岸田氏は、安倍氏の首相秘書官を6年半も務め、安倍氏側近とされた防衛省の島田和久事務次官を7月1日付で退任させて意地を見せたものの、結局、安倍氏が主張した拡大路線を追認した。
もっとも岸田氏は5月に東京であった日米首脳会談で合意した日米共同声明の中で、ミサイルの脅威に対抗する(※筆者注・敵基地攻撃)能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明。さらに防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明している。
バイデン大統領はこれを強く支持した。対米外交デビューの場で、米国が喜ぶ防衛力強化と防衛費増額を打ち出したのは、対米追従を続けてきた安倍路線と変わるところがない。
米国にいい顔をするための社交辞令含みだったとしても示された政策に従うのが官僚の務めだ。現に防衛省は概算要求の策定をめぐり、日米共同声明と「骨太の方針」の2点を踏まえたことを明らかにしている。
国政選挙のない「黄金の3年」を迎え、長期政権をうかがう岸田首相。
党内外の保守派を忖度して早々と決めた安倍元首相の国葬は世論の反発を招き、毎日新聞の調査で前回より16ポイントも急落して36%という就任以来、最低の内閣支持率に落ち込んだ。
独自の経済政策が行き詰まりをみせる一方で、積極的に示した対米追従の姿勢が因果応報の形で跳ね返り、青天井となりかねない過去最大の防衛費概算要求を呼び込んだ。
結局、死せる安倍氏が生きる岸田氏を走らせているのだ。
何に使うつもりなのか?

価格表示が一切ない概算要求(防衛省の資料より)
防衛費はどの部分が増えているのか。
概算要求をみると、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」ための決め手は、スタンド・オフ防衛能力、総合ミサイル防空能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連機能、機動展開能力、持続性・強靭性等に必要な取組――の7項目だ。
スタンド・オフ防衛能力とは、相手の脅威圏の外側から攻撃できる長射程ミサイルを持つことを意味する。今年12月に改定される国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の安全保障3文書に書き込む予定の「反撃(敵基地攻撃)能力の保有」に欠かせない兵器にあたる。
その中の目玉は、菅義偉政権で閣議決定した「12式地対艦誘導弾能力向上型の開発」を受けて、射程1000キロを超える地上発射型の量産に入ること。また研究を進めてきた弾道ミサイルに近いとされる島嶼防衛用高速滑空弾の早期配備型も量産が始まることだ。
迎撃が困難な極超音速誘導弾の研究も開始される。このミサイルは、音速の5倍以上で飛翔するロシアの「アバンガルド」、中国の「東風17」に似た攻撃的兵器だ。
いずれも敵基地攻撃に使用可能な兵器類で、3文書の改定により、防衛政策が抜本的に改定されれば、日本は憲法改正を抜きにして先制攻撃ができる国に変わり、「専守防衛」は形骸化する。
無人アセット防衛能力は新しい分野にあたり、空中・水上・海中で使う無人兵器のこと。空中からの監視や攻撃に使う無人航空機「UAV」や水中に敷設された機雷を除去する「無人機雷排除システム」などを取得する。
ほかに在来型兵器の戦車や戦闘機、潜水艦なども調達する。
防衛省の恐ろしい「どんぶり勘定」






