社説(1/10):女性の自殺者急増/弱者救済のアクセルを踏め

社説(1/10):女性の自殺者急増/弱者救済のアクセルを踏め

河北新報

 2010年以降、10年連続で減少していた自殺者数が、増加に転じることが確実視されている。20年は11月までの暫定値で前年同期比550人増の1万9225人に上り、特に女性の自殺が急増している。急変の原因、背景は明らかであり、対策は一刻の猶予も許されない。
 警察庁の自殺統計によると、20年の月別自殺者数は新型コロナウイルス流行第1波後の7月以降、前年を上回る状況が続いている。年間累計は10月末の時点で前年同期を超えた。
 11月までの数値を見ると、男性は1万2841人で前年を202人下回った。一方、女性は6384人で750人増え、特に8月は45.0%増の673人、10月は88.6%増の879人に達した。極めて憂慮すべき事態だ。
 厚生労働省がまとめた10月分のデータからうかがえるのは、自殺した女性の職業の中でも事務員(33人)や医療・保健従事者(26人)、販売店員(22人)、飲食店員(16人)が目立つことだ。
 また、19歳以下が計20人なのに対し、20~70代の各年代と80歳以上は、いずれも100人台とおしなべて多い。20~40代はそれぞれ、前年同月比で約2倍だったことも特徴だ。
 総務省の労働力調査に、女性の自殺者増を解き明かす一端を見いだすことができる。
 19年は好調な雇用情勢を背景に全ての月で前年同月を上回ったが、20年は状況が一変。パートやアルバイトなどの非正規労働者数は、全国に緊急事態宣言が発令される前の3月に減り始めた。7月は比較可能な14年1月以来、最大の131万人のマイナスを記録した。
 最新の11月分の調査結果によると、非正規労働者数は前年同月に比べ62万人減の2124万人で、9カ月連続のマイナスとなった。これらの数字から浮かび上がるのは、女性の経済的な困窮にほかならない。
 新型コロナの感染がみたび拡大し、政府は7日、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態を宣言した。
 飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請したほか、午後8時以降の不要不急の外出自粛も求めた。飲食店、観光関連などのサービス業に従事する割合が多い女性の働く場が失われ、窮地に追い込まれることが想定される。
 生活保護や失業給付、雇用調整助成といった既存の支援事業を組み合わせつつ、生活の維持を支援する施策が求められる。緊急的なセーフティーネットを用意し、ミクロの視点で「体感不安」を払拭(ふっしょく)する必要がある。
 菅義偉首相は昨年10月、所信表明演説の締めくくりに自身が目指す社会像を「『自助・共助・公助』そして『絆』」と表現した。しかし今、自助や共助に頼る時間はない。

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