待遇改善を 介護職訴え切実「夢持てる環境に」【岸田新内閣発足】

待遇改善を 介護職訴え切実「夢持てる環境に」【岸田新内閣発足】

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あなたの静岡新聞

「経験を積むほど魅力が増す」とも言われる介護の仕事。待遇面の改善が期待される=4日午後、静岡市葵区の特別養護老人ホーム「晃の園」

 首相指名を4日に受けた自民党岸田文雄総裁は組閣を行い、岸田内閣が発足した。新首相は総裁選の公約で看護師や介護士、保育士らの公的賃金が仕事内容と比べて低いとして抜本的見直しを掲げた。医療・福祉分野の環境整備とともに、労働問題は19日公示、31日投開票と決まった衆院選でも重要な課題。待遇改善を望む介護職からは、期待とともに切実な訴えが聞こえてくる。

 「結婚して、住宅を買って、子どもが生まれてという時の家計が一番苦しかった」。県中部の介護士の30代男性は振り返る。勤続5年目前後にライフイベントが続いたが、月給は就職時とほぼ同じだった。

 子どもが1歳の頃は年収約300万円。生活費を切り詰め、妻がパートに出て支えあった。「入居者1人当たりの利用料が決まっているので、満員になっても施設の収入は頭打ち。事情は理解しているが、何とかならないか」と不満を漏らす。

 2020年の国の賃金構造基本統計調査によると、県内の介護施設職員と全産業の月額の平均賃金には約5万円の差があった。格差は年々縮んでいるが、介護保険制度自体の改革が進まないと抜本的な解決は難しい。

 岸田新首相は「新自由主義からの脱却」を掲げ、アベノミクスを継承する成長戦略だけでなく「分配」の施策の重要性も強調する。介護職は高齢化社会の進行で需要は増す一方、待遇面や厳しい仕事とのイメージが影響して人材不足が続く。県内約500施設でつくる県老人福祉施設協議会の種岡養一会長は「イメージの払拭(ふっしょく)に努めてきたが、現場レベルでは限界を感じる」と指摘する。

 今の介護現場は職員のやりがいや使命感に支えられている面が大きい。静岡市葵区で社会福祉法人「駿河会」が運営する特別養護老人ホーム「晃の園」統括部長の川崎誠之さんは「経験が物を言う仕事で続けるほど魅力が増す。現場の職員や志す人たちが、この仕事に夢を持てるよう環境を整えてほしい」と現場の思いを代弁した。

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