「PCR陽性」でも在日米軍は「隔離ナシ」…水際対策のとんでもない“抜け穴”
「PCR陽性」にもかかわらず…

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米海兵隊の男性兵士が成田空港のPCR検査で新型コロナウイルスの陽性と判明しながら、隔離されることなく、沖縄の米海兵隊基地へ移動していたことがわかった。 【写真】「ワクチン大国」アメリカでいま起きている「ブレイクスルー感染」の恐ろしさ 日本への入国者は陽性、陰性を問わず、14日間隔離される。米兵の場合、在日米軍施設で隔離期間を過ごすが、今回、陽性が判明した米兵は米軍の管理下に置かれることなく入国した翌日に民間機で那覇空港に移動していた。 政府から連絡を受けた沖縄県は、米兵の近くに座っていた27人のうち、連絡が取れた20人の健康状態を確認したが、連絡が取れていない人もいる。 成田空港や羽田空港から入国し、PCR検査を受けながら、勝手に国内の基地へ移動した米軍関係者は今回を含めて3例目だ。 米兵は日米地位協定により、日本政府による入国審査や検疫を免除されている。民間空港を利用した場合はPCR検査が実施されるが、特権的な扱いに慣れた米兵の無分別な行動をただす手だてはなく、感染拡大防止の水際対策に大穴が空く結果となっている。 問題の米兵は、沖縄市、宜野湾市など2市1町1村にまたがるキャンプ・フォスター所属の20代男性で、10月30日に成田空港に到着し、検疫所のPCR検査で陽性と判明した。 本来なら、在日米軍の管理下に移され、米軍施設内で陰性になるまで療養することになるが、この米兵は隔離されることなく、翌31日に沖縄へ移動。キャンプ・フォスター内の検査でも陽性となり、基地から沖縄県に連絡があったことで一連の事態が発覚した。 ナゾなのは入国後、なぜ勝手に移動できたかだ。陰性の場合でも公共交通機関を使わずに移動し、14日間の隔離を受ける必要がある。ただし、隔離措置はあくまで要請なので、無視される可能性は残る。
今回で、なんと3度目だ

米海軍横須賀基地に停泊中の駆逐艦[Photo by gettyimages]
過去にあった類似の事例をみると、昨年7月12日、羽田空港から入国した米兵の家族3人がPCR検査を受けた。検疫所は検査結果が出るまで空港内などで待機するよう求めたが、翌13日午前、民間機で山口県の岩国錦帯橋空港へ移動し、隣接する米海兵隊岩国基地に入った。同日昼、検査結果が出て3人の陽性が判明した。 3人は「公共交通機関は使わず、レンタカーで移動する」と虚偽申告までしていた。 外務省の鈴木量博北米局長は在米日軍のシュナイダー司令官(いずれも当時)に遺憾の意を伝えたうえで調査を徹底し、軍として厳正な処分を行うよう申し入れた。 もう一例は昨年7月19日、米海軍横須賀基地の軍関係者が羽田空港に到着後、PCR検査を受けたが、結果が出る前に米軍の車両で横須賀市に移動し、米軍が隔離のために利用しているホテルで1泊した。翌20日に陽性と判明した。 本来なら、検査結果が出るまで空港の検疫所が指定する場所にとどまらなくてはならないが、日本側の要請は無視される形になった。 先の岩国基地の3人の事例から、わずか1週間後の出来事だ。在日米軍司令部が日本政府の抗議を受け流しているか、兵士が司令部の指示を無視しているかのどちらかしかない。
裏口から自由に出入りできてしまう
そして、また愚行は繰り返された。 今回の場合、先の2例と違ってPCR検査で陽性が判明しているにもかかわらず、行動の自由を許している点が大問題だ。考えたくはないが、日本という国自体が米兵らに軽く見られているのではないだろか。 日米地位協定第9条2項には「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される」とあり、米兵は入国に関わる一切の手続きを免除されている。軍用機や軍艦で米軍基地に直接入る場合は完全にフリーパスで、民間空港を利用する場合には、身分証明書と命令書を提示するだけで済む。 入国管理を受けないのだから、政府は在日米軍の兵員数を正確に把握できていないことになる。外務省のホームページには「在日米軍人数(2019年9月末)5万5227人」とあるが、情けないことに「米国防省HP掲載資料より」と書かれている。 日米両政府が合意した日米地位協定合意議事録には「日本国政府は、両政府間で合意される手続に従って、入国者及び出国者の数及び種別につき定期的に通報を受ける」とあるが、空文化している。 米国は新型コロナの感染者数、死者数とも世界一だ。日本政府は米国からの入国拒否を続けているが、米兵はノーチェックで入国する。玄関は閉めても、裏口から自由に出入りしているのと同じことだ。
重要な情報は一切入ってこない

米海兵隊普天間基地[Photo by gettyimages]
在日米軍専用施設の7割が集中する沖縄県では昨年夏、米軍基地内で感染が爆発した。米軍は7月、8月に大規模な異動時期を迎え、大勢の米兵や軍属が基地の集中する沖縄へ押し寄せた。 在日米軍司令部は「出国前と入国後にそれぞれ14日間、隔離している」というが、無症状者に対してはPCR検査を行っていなかった。 在沖縄米軍司令部は米海兵隊普天間基地とキャンプ・ハンセンでクラスター(集団感染者)の発生を認め、両基地を「シャットダウン(閉鎖)した」と発表した。しかし、両基地ともゲートで検温するだけで米兵や日本人従業員の車はふだん通り出入りさせた。 発症状況からみて感染拡大が疑われるのは、米国の独立記念日にあたる7月4日とその前後だ。各基地の内外で大規模なパーティーが開かれ、それぞれのイベントに大勢の米兵やその家族らが集まり、大騒ぎしたことがわかっている。 だが、米軍は日本側への詳細な情報提供を拒み続けた。沖縄県の玉城デニー知事は同月8日、記者会見し、「ローテーションや転勤などで沖縄の外から入ってくる米軍関係者の数などの状況について、一切情報がないということは大きな問題だ」と述べた。 当然だろう。どれほど厳格な水際対策をとっても、米軍というブラック・ホールに飲み込まれてしまえば、すべての努力は水泡に期す。 そもそも日米両政府は2013年1月の日米合同委員会で「在日米軍と日本国の衛生当局間における情報交換について」(2015年9月修正)を取り交わし、「人の感染症」について67の疾病を挙げ、「確認した場合は、可能な限り早期に通報する」ことで合意している。 疾病の中には「指定感染症」「新感染症」があり、新型コロナウイルスがこれらに該当しないはずがない。 おかしな点はまだある。米兵には日本の法律が適用されない。政府は改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づいて緊急事態宣言を繰り返し発令したが、米兵とその家族、軍属は従う必要がない。 在日米軍は独自に感染地図を作成し、警告を発しているものの、日本政府と米軍との意志疎通は極めて薄弱なのだ。
米軍基地は手が出せない「聖域」
つまり、こういうことだ。 政府は、米軍基地の米兵がいつ、どこから何人来て、どのような生活を送っているのか皆目わからず、基地の米兵やその家族、軍属は日本の法令に従う必要もない。まさに基地は「聖域」なのである。 米軍の特権を認める日米地位協定によって「米軍優位、日本軽視」の風潮が米兵に浸透し、空港における検査をすり抜ける事態を招いていないだろうか。国民の安全を守るため最善策を取ろうとするならば、政府は自分勝手な米兵の行為を見逃してはならない。 2018年7月、全国知事会は日米地位協定の抜本的な見直しを日米両政府に提言した。提言は、国内法の適用や事件・事故時の基地への立ち入りなどを日米地位協定に明記するよう要請したが、日米両政府とも事実上、無視を決め込んでいる。 今回のコロナ感染した米兵について、松野博一官房長官は16日、「政府として在日米軍に対し、水際対策の徹底と再発防止について申し入れを行った」と述べた。またまた「お願いベース」の呼び掛けにとどまった。
半田 滋
