「こんなので…」ワクチン未接種で解雇言い渡された 不当な扱いに悲鳴

「こんなので…」ワクチン未接種で解雇言い渡された 不当な扱いに悲鳴

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西日本新聞

解雇を言い渡された男性。仕事にやりがいを感じていただけに、納得がいかない

 ホットラインに参加した花輪仁士弁護士(山梨県)は「接種が進むにつれ、打っていない人への差別が強まっていると感じた」と話す。208件の相談があった昨年5月は医療従事者の訴えが中心だったが、10月はその他の労働者をはじめ、学生や、ワクチンを巡る考え方の違いで離婚を考える夫婦の声もあった。温浴施設で店員から接種済みかどうか確認された客もいた。

 花輪弁護士は、労働者被害の代表例である解雇について「ワクチンを打っていないことが理由なら基本的に不当解雇に当たる」と指摘する。事業主が業績不振など別の理由を装う例もあり、相談を呼び掛けている。未接種者を職場で周知するのも差別につながるとして使用者に配慮を求める。

記者ノート 

「なんで打たんの」「頭、おかしいんじゃない?」。記事に登場する男性は新型コロナウイルスのワクチンを打っていないことで職場からこう責められていた。どんなにつらかっただろう。

 接種は本人の同意が原則。ただ、2回受けた人は国の集計で約78%(昨年末、全人口比)に達し、受けていない人を「異質な存在」と見る傾向は強まっているようだ。

 そうやって職場や知人間、家庭で差別や偏見にさらされ、言い返せる人がどれだけいるか。「打たない権利」は残念ながら尊重されていないように思う。

 フランスの思想家ボルテールはかつて、表現の自由を「私はあなたの意見に反対だが、あなたがそれを主張する権利は命を懸けて守る」との言葉で表したとされる。同じようにワクチンを巡る考え方の違いも認め合いたい。そんな懐の大きな社会こそ、暮らしやすいと思うのだが。 

(河野賢治)

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